軽飛行機のなるほど講座

 おそらく、あまり知られていない軽飛行機の世界。ということで、軽飛行機のへぇーというお話です。自問自答していますので、ほかに何かお知りになりたいことがあれば、ゲストブックへ書き込んでください。知っている範囲内でお答えします。

Q1 軽飛行機のプッシュバックは誰がするの?
Q2 距離と速度と高さと体積と重さ
Q3 レギュラー、満タンで!
Q4 低翼機にはどうやって乗るの?
Q5 軽飛行機のタイヤは駆動する?
Q6 軽飛行機でも自動操縦できる!
Q7 飛行機の速度はどうやって測るのでしょう?
Q8 飛行機の高度はどうやって測るのでしょう?
Q9 軽飛行機はどこまで上がれるのでしょう?
Q10 軽飛行機はどのくらいの距離で離着陸できるのでしょう?

Q1 軽飛行機のプッシュバックは誰がするの?
 飛行機は、前には進めますが、後ろには進めません。それは、エンジンの推力で飛ぶ構造になっているからです。後退用のエンジンを積むことも技術的にはできると思いますが、費用対効果がありません。
 エアラインの飛行機は、出発の際、「Request push back.」といえば、数百トンの機体をトーイングカーが押してくれます。じゃあ、軽飛行機はどうするんでしょうか。「Request push back.」といえば、誰か押してくれるんでしょうか。
 
 答えは簡単です。機長自ら、自分で翼とエンジンカバーあたりに手をあてて、後ろ向きに「よいしょ」と押すんです。車がエンストしたときに、パーキングブレーキを解除した状態で、周りからじろじろ見られながら一生懸命押しますよね、あれと同じです。数人で乗る場合、その方の協力をいただければ、よりスムーズ(?)にプッシュバックできます。ちなみに、プッシュバックの際は、エンジンはかけていません。そりゃあ、危ないですから。
 ちなみに、駐機するときは、できるだけプッシュバックしなくてもいいように駐機します。車庫入れならぬ駐機スペースが狭くて翼端が他の飛行機にあたりそうで不安なときやどうしてもバックしないと駐機できないときは、機長自ら自分の力でプッシュバックします。
 左の写真は、空港の駐機場に帰ってきて、これから、プッシュバックしようとする際の軽飛行機です。黄色のセンターライン、ばっちしですね。さすが、キャプテン!

Q2 距離と速度と高さと体積と重さ
 日本で使う単位はメートル法、距離・速度・高さがメートル、体積はリットル、重さはグラムですね。飛行機の世界はどうなっているのでしょうか。
 
 飛行機の世界は、ヤードポンド法です。距離・速度はマイル(風速はノット、エアラインなどの飛行機の速度もノット)、高さはフィート、体積はガロン、重さはポンドです。ひとつひとつ紐解いていきましょう。
 まずは、マイルから。距離・速度のマイルですが、そもそもマイルには、statute mileとnauticai mileがあります。1 statute mile(sm)は約1.61キロメートル、1 nauticai mile(nm)は約1.85キロで、nauticai mileはいわゆるknot(ノット)です。飛行機によって、速度計の目盛りが、statute mile per hourだったり、nauticai mile per hourだったりします。離陸速度や着陸速度を間違えないようにしないと危険なので、注意が必要です。
 次に高さのフィートですが、1 feetは約30.5cm、空港の場周経路は1000feet前後なので300m。それから、飛行機の燃料の体積の単位はガロンで、1 gallonは約3.8リットルです。(イギリスでは同じ1ガロンでも約4.5リットル)最後に、重さはポンドで、1 pondは約0.45kgです。2人乗りのCessna150で最大重量1600lbs(約720kg)、4人乗りのPiper28で2150lbs(約970kg)、意外と軽いですね。
 左の写真は、サンフランシスコ周辺の航空図です。ついている縮尺は、km、sm、nmの3種類です。管制塔にリポートする際は、手分量で測って、「10miles,east」などとリポートします。

Q3 レギュラー満タンで!
 軽飛行機の燃料は、いつ、誰が、どこへ給油しているのでしょうか。
 
 空港の設備にもよりますが、軽飛行機の給油は、給油車が給油する場合と給油スタンドで直接給油する場合があります。
 私が訓練したヘイワード空港にはシェル石油の給油スタンドがあり、着陸して駐機場へ帰る途中にスタンドへ寄って満タンにします。車のガソリンスタンドのように、給油所へ行き、エンジンを切って、「80、満タンで!」と言って、満タンにし、燃料代を支払って、給油後にまたエンジンをかけて駐機場へ戻ります。ちなみに、このときもグランドコントロールへ滑走許可をもらいます。
 軽飛行機の燃料は、オクタン価により、80/87(赤色)、91/96(青色)、100/130(緑色)、115/145(紫色)があり、Cessna150の使用燃料は80(最も安い「レギュラー」)以上でした。また、燃料はB747と同じように、両翼に積んでいます。
 2人乗りCessna150の場合、最大26gal積載し、航続距離は475mile(70%出力、7000feet)。4人乗りPiper28の場合、最大50gal積載、航続距離は495mile(70%出力、7000feet)です。
 ちなみに、左の写真は、私のファーストソロ時の写真です。この機体(N6566G)は、昔、訓練生がガス欠してしまい、ゴルフ場へ緊急着陸したことがあるそうで、それを聞いてから、飛行前点検の燃料チェックに力が入りました。燃料チェックは、翼の上の燃料キャップをはずして、燃料があるかどうかを目視します。ガス欠になるとえらいことになるので、必ずチェックします。

Q4 低翼機にはどうやって乗るの?
 軽飛行機には低翼機と高翼機があります。低翼機は翼が機体の下についており、高翼機は翼が機体の上についています。Cessnaは高翼機、Piperは低翼機です。
 Cessnaのような高翼機は、直接ドアを開けてそのまま乗れますが、軽飛行機の低翼機は、一体どうやって乗るのでしょうか。

 Piperは低翼機は、左の写真のように、翼に足をかけてよいしょと乗ります。一応、足をのせるところには、すべり止めがはってあります。
 少しわかりにくいかもしれませんが、写真右の翼の上に白い突出物(Jの文字の上)が見えますが、このキャップを緩めてここから燃料を給油します。
 ちなみにに低翼機と高翼機にはそれぞれ一長一短があります。例えば低翼機は座席から上の視界が良好で空との一体感を感じることができますが、下を見るときは翼が邪魔になり、着陸時にタイヤが見えません。高翼機は、上方の視界がよくありませんが、下方の視界がいいため、よく写真撮影に使われています。着陸のときに接地が目視できるので、着陸の下手な私には高翼機のほうが好都合です。

Q5 軽飛行機のタイヤは駆動する?
 軽飛行機に限らず、エアラインの飛行機のタイヤは、まさか駆動装置付いてないですよね。離陸するときのスピード、すごいですよね。ほんとにエンジンだけであのスピードが出ているのでしょうか。

 軽飛行機を自分が操縦するまで、きっとタイヤには駆動装置が付いているものと思っていました。というのも、あれだけのスピードをプロペラの推力だけで動かせるわけないよと考えていたからです。
 軽飛行機の飛行前点検をして、スロットルを握ってはじめて、タイヤには駆動装置が付いていないのを確認しました。軽飛行機のプロペラの推力は想像以上にすごくて、当然ですが、プロペラの推力で前進しています。エアラインの飛行機も当然、ジェットエンジンの推力で前に進み、空を飛びます。
 それが体感できたとき、ものすごく感動しました。左の写真のPiperも、タイヤに駆動装置は付いていません、ブレーキのみが付いています。

Q6 軽飛行機でも自動操縦できる!
 当然、エアラインの飛行機には自動操縦装置がついていますので、長距離の国際線のパイロットの方は、コクピットで食事をされたり、コーヒーなどを飲むことができます。軽飛行機の場合は常にしっかりと操縦かんを握っていないといけないのでしょうか。

 私が乗ることができる軽飛行機クラスには、自動操縦装置など高価なものはついていません。でも、実は、水平尾翼すなわち昇降舵(エレベーター)の先端にほんと小さな水平尾翼(トリム)がついていて、それを可動させることで、操縦かんの上下、すなわち上昇・下降をある程度止めて、一定の高度で飛ぶことができます。
 セスナの場合、操縦席のフラップレバーの下あたりに、トリムタブがあって、操縦かんが上下しない程度に調整してやると、あら不思議、軽飛行機の高度が保てるんです。少し、操縦かんに手を添えるという感じで、リラックスして飛べるんです。パンや缶コーヒーぐらいを食べたり飲んだしようと思えばできます(したことはありません)が、国際線のような機内食は無理です。もっともそんなものは出てきません。
 左の写真の水平尾翼、右側と左側で少し違うのがわかりますか。右側の水平尾翼の先端に小さな可動部分があるのがみえるでしょうか、それがトリムで、私流に言えば、「擬似自動操縦装置」です。

Q7 飛行機の速度はどうやって測るのでしょう?
 飛行機のコクピットには様々な計器があります。そのなかで、飛行機の速度は自動車のようにタイヤの回転数から測っているのでしょうか。でもそうすると、離陸した途端にタイヤが止まるので、速度計の針の指す位置がゼロになってしまいます。

 飛行機の速度は、「静圧」と「動圧」の差で測ります。
 Cessna150の場合、左翼の下に、前方に向けて動圧を測るピトー管がついており、これで、加速して受ける風の圧力を調べます。そして、胴体の横の動圧を受けない小さな穴で静圧を調べて、速度計の針を動かしています。
 エアラインの飛行機も同様です。Boeing747では前方の客席下のあたりにピトー管がついています。
 ただ、この場合、速度といっても、対気速度(気流に対する速度)をあらわしています。速度には対地速度もあります。これは空中は風の流れがあるからで、気流に対して同一方向に飛べば風に乗って対気速度が同じでも、対地速度は上がります。
 左の写真は、Cessna150のピトー管とBoeing747のピトー管です。図体はかなり違いますが、原理は同じです。
 
Cessna150のピトー管Boeing747のピトー管

Q8 飛行機の高度はどうやって測るのでしょう?
 飛行機のコクピットには様々な計器があります。今度は、飛行機の高度です、どうやって高度がわかるのでしょうか、地上に電波を飛ばしてその反射する時間で逆算しているのでしょうか。でもその技術はかなり最近ですし、地上の凹凸によって高度が変わるのも変ですね。やはり物理の世界がヒントになります。

 高度が高くなると、大気にどのような変化が起こるでしょうか。そうです、高度計は気圧の差を利用しています。真空に近い状態の薄い密閉型金属製容器(空ごう)が外部の圧力により変化するのでそれを利用して、高度を表示しています。
 通常、高度とは海面からの高さをあらわしています。気圧により高度計の表示する高度は異なるため、空港から離陸する場合や着陸しようとする場合はその空港の気圧(日本の場合はQNH、アメリカの場合はaltimeterといいますが、同じものです)にあわせないと、危険です。私の場合はVFR(有視界飛行)ですが、計器飛行の場合、高度を間違えれば地上に激突ということもおこります。以前、映画の「ダイハードU」で、悪役に空港の気圧を変えられて、エアラインの飛行機が地上へ激突されるというシーンがありました。
 左の写真はPiper28の高度計です。時計のようですが目盛りは0から9までで、この飛行機の場合、針が3つあります。長針が100フィート単位、短針が1000フィート単位、細針が10000フィート単位をあらわしており、この計器があらわす高度は1700フィート(約500m)です。気圧のセッティングは、左下のノブを回しながら、2と3の目盛りの間にある数字を変えて調整します。

Q9 軽飛行機はどこまで上がれるのでしょう?
 エアラインの飛行機の巡航高度は30000フィート前後(約10000m)です。軽飛行機もそれくらいの高さを飛行できるのでしょうか。

 2人乗りのCessna150の場合、富士山程度の高さが上昇限度です。具体的には、12650feet(3860m)です。4人乗りのPiperの場合、14300feet(4360m)ともう少し高めです。
 一度、Cessna150に乗って10000feetまで上昇を試みました。しかし、高度が高くなるにつれて空気がうすくなるため、Cessna150の100馬力ではなかなか思うように上昇できず、8000feetぐらいであきらめてしまいました。
 ですから、2人乗り程度の軽飛行機では、左の写真(エアラインの飛行機から見る)のようなアングルで富士山を撮影することはできません。

Q10 軽飛行機はどのくらいの距離で離着陸できるのでしょう?
 B747などのエアラインは離着陸に2000〜3000mの滑走路が必要です。軽飛行機はどのくらいの滑走路が必要なのでしょうか。

 離着陸に必要な滑走路の長さは、厳密には、飛行機の重量・空港の高度(気圧)・風向・風力・フラップ使用の有無などの条件で異なります。高度の高い空港では空気が薄いので、海抜0メートルの空港よりも滑走距離が長くなります。
 2人乗りのCessna150で最大重量1600lbs(約720kg)として離陸する場合、海抜0メートルで地上滑走が735フィート(224m)、滑走路端の高さ50フィート(15.3m)の障害物をクリヤーするには1385フィート(422m)の長さが必要です。また、同じ条件で着陸する場合、地上滑走が445フィート(136m)、滑走路端の高さ50フィート(15.3m)の障害物をクリヤーして着陸するには1075フィート(328m)の長さが必要です。
 4人乗りのPiperになると、最大重量が2150lbs(約970kg)と重たくなりますので、離陸時の地上滑走が800フィート(244m)、着陸時の地上滑走が535フィート(163m)と長くなります。
 滑走路の長さの話をすると、その昔、アメリカで夜間飛行の着陸をしようとしたときのことを必ず思い出します。よく滑走路がわからず、5900フィート(1800m)のマーセド空港の滑走路を全て使ってしまい、教官から笑われたんです。
 写真は、滑走路1800mの広島西飛行場です。折りしもマーセド空港の滑走路と同じ長さです。



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